賞味期限切れの女

「フェリス・クンプレ・ア~ニョス!」と軽~く言ったら、「大してハッピーな誕生日でもないんだけどね…。」とツレない返事。

その日29歳を迎えた彼女は、8歳の長女を頭に、4歳の長男、1歳の次女という、3人の子持ち。
ダンナはアメリカ人で、この街でインターナショナルスクールの教師をしている。
彼女自身は純然たるマヤ系グアテマラ人だけど、ガイジンと結婚しているお陰で、このあたりの一般の家庭よりは、少しばかり生活もいいはず。

小さいけれど持ち家もあって、収入もそこそこで、子供にも恵まれて、他人から見れば「一体何が不足なの?」と詰問したくなるような彼女だが、
側に居たダンナによると、バースデー・クライシスでどっぷりブルーに陥っている模様。

晩婚化が進む日本じゃ、そういうもんは未婚女性が悩むもんだよ、子供付ダンナ付20代のアナタがどーして嘆く必要があるのかいな、と言ってみても、
どうもこの日を境に、自分が果てしもなくバアさんになって、女としての賞味期限が切れつつあるように感じているらしい。

確かに、この辺りの特にマヤインディアンの人たちの加齢の速度は、一概に私たちよりもかなり早い気はする。

以前、切迫流産になりそうになり、この国の市民病院に入院していた時、
隣のベッドで寝ていたどう見たって40代後半の女性が、実際には自分と数年しか変わらない38歳だと知って、密かに相当驚いたことがある。

若くして子供を生み始めるこちらの人たち。
日本なら、まだ渋谷や裏原宿で遊んでいそうな年齢の、17、8歳の女の子が、赤ちゃんを抱いている姿は珍しくない。
そして、その年齢から始まって7人、8人、時には10人以上と子供を増やしていくのだから、私のように30半ばで結婚して子供をひとり生んだだけの人間とでは、見た目も違っているのはコレ当たり前の話ではある。

うちの庭師さんには息子が3人と娘が3人いて、そのうちのひとりの娘が今度結婚するそうだ。

花嫁さんは15歳…。

日本だったら法律で罰せられちゃうこんな結婚も、この土地では割と普通のことだったりする。
彼女から見たら、自分は冗談でもなくバアさんだ、と思ったら、なんだか私までブルーになってしまった。

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