アンタ誰?

公園で、子供の乗ったブランコの背を押しつつ、何にも考えずにボーッとたたずむハハチニ。
同じように、隣のブランコに座っている小さな女の子を押してあげているどこかのおばあちゃん。
こんな時、人って誰でもかなり呆けた顔をしているんだと思う。
揺られている子供たちもしかり。
ブランコの金具がきしむ音しかしない、静かで平和な時間が4人の間に流れる…と、

「それで?今はどの辺りに住んでいるの?」、
突如おばあちゃんが口を開いた。

ふいを突かれるとはきっとこんな時のこと。
それで?も何も、文脈もあったもんじゃあない。
よく知った友達のごとく会話は始まって、「今は」ってことは私たちが昔住んでいた場所を当然知っているってことで、
…まず第一に、アンタ誰?

2週間ほど前、子供が夜中に腹痛を起こし、隣町の病院の緊急病棟に駆け込んだことがあった。
付き添いの身としてほとんど眠れない夜をそこで過ごした後、翌朝になってケロリと直った子供と共に、家路に向かうバスに乗ったところ、
隣に座っていたおばさんが、くるりとこちらに向くや私に言った。
「昨夜はたいそう泣いてたねぇ。」

そりゃあ昨晩はむちゃくちゃ泣いてましたけどぉ、家でも病室でも、声を限りに泣き喚いてましたけど、
だけど、いくらなんだって、ソロラ県の県民全員に知られるほどの騒ぎではなかったわけで、
…だから、アンタ一体誰なのさ?

住んでいる日本人がほとんど居ないこの街で、しかも小さな子供を連れたチニータ(中国娘)は私ひとりとあって、
良くも悪くも、自分はかなり目立っているらしい。
しかも、この街の人たちときたら、話し好きで噂好き。
ヘタをすると、我が家の今晩の献立まで知っていそうな勢いなのだ。

少々うざったい感もあるけれど、隣人同士の無関心さが引き起こす事件とは無関係なここの社会。
そんな環境で子育てするのも、悪くはないもんだと最近思っている。

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