二つの国の観覧車
さてさて、時間は唐突にさかのぼって10月のお話。
私たち母子が日本にいる間の地球の裏側パナハッチェルでは、年に一度の大きなお祭りが行われていた。
この街の有名なお祭りとしては他に、春のセマナサンタというのがあるけれど、規模としてはこちらの方がちょいとばかし大きい。
普段は静かな教会前の広場も、この時期になるとどこからともなく集まる的屋さんの屋台やら人波で、歩くのもままならぬくらいに賑わうのだ。

中でも目に引くのが、大小3台備え付けられた観覧車。
一番大きなものは直径10メートル以上はあるだろうか、2席ずつ並んだ設えのそれは、もちろん恋人達に人気で、しかも、もっと熱くなれとばかりにぐるんぐるん回る。
キャーキャー言っている彼らの姿にも増して、ここで最も注目すべきなのは実はココ・・・。

こっこっこっ怖いっす。
お隣の町ソロラのお祭りにて、突如バランスを崩して倒れた観覧車で死者が9人も出たのは確か4年くらい前のこと。
友人の話では、バンッという音と共に、設営中に感電したおじさんが上から降ってきたこともあったという噂の代物。
いくら絶叫モノ好きな私でも、きっとこれだけは一生乗らない。
でも、地元の人たちには今年も大人気の観覧車なのだ。
この街の守護聖人は聖フランシスコというお方。

一応カトリックの国ではあるものの、この辺りの宗教はマヤの原始宗教とかなり混ざり合って今に至っていることもあって、
この人々の派手派手なコスチュームが、一体どんないわれを持つのか、傍から推測するのはなかなか難しい。

そして、どんなにこじつけて推測してももっと分からないのはこちらの方々。

仮装好きなこっちの人たちの祭りには、何かにつけて出てくるこの奇怪な軍団。
かなり大真面目で、ズンチャカズンチャカとフォークダンスもどきを披露するのである。
大した盛り上がりも何もないまま、大観衆の前での数十分間。
踊る方もなんだが、それを飽きずに見ている人々もなんなんだか…。
ここら辺が、私のような凡人には到底理解することのできない、グアテマラ人の不思議であると、毎回思う。
さて、夜はまた夜で、なかなか綺麗な教会前。
モーターの音も高らかに、人々の嬌声も華やかに、まわるまわるよオンボロ観覧車。

祭りの夜の部のメインイベントは、これまたこちらの人たちが大好きな花火大会だ。
その中でも主役級をはるのが、この人間ウシ花火。


危ないの危なくないのって、そりゃあ危ないに決まっているわサ。
背中を火傷するだなんて、当然のことながらあるらしい。
でも、人々が言うには、このウシ花火の役をやれるのはとても名誉なことなんだそうだ。
さらに書くと、広場の隅には花火のやぐらが建てられていて、仕掛け花火で彩られた聖フランシスコが鎮座されている。
…と言うと聞こえはいいのだが、ここの花火はやたらと煙がでるので、群集の歓声と共に点火されるや否や、さながら火祭りに上げられて煙にいぶされた、哀れ聖フランシスコ様と化すのである。
今回はなかったようだが、数年前に私が見た時の仕掛けでは、
暫くもうもうたる白煙の中に居た聖サンフランシスコ像は、突如シュルシュルと音を立てたかと思うと、首から上のみがもの凄い勢いでスピンし始めた。
どよめく群集と動揺する私の心。こっこれはもしや、…エクソシスト!?
ところで、そんな一大イベントを今年は見逃してしまった私たち母子だが、一体その頃何をしていたかと言えば、
オシャレなベイエリアは横浜みなとみらい21、一周15分掛かる大観覧車に揺られていたのだった。
グアテマラと日本、かくも遠き二つの国~♪、なのである。

