海に行ったよ
ここは中南米。とある小さな国のお話。
目の前にある青い湖を囲む山々を抜けて、私達が住んでいる街とは湖を挟んでちょうど反対側にあたる道路をしばらく走ると、
その道はどーんと太平洋にぶつかる。
普段はすっかり山の民と化しているもので、重く気だるい熱帯の空気とか、潮を含んだ風の匂いとか、遮るもののない大洋の開放感とか、
全てに心浮き立つ一日だけの小旅行だ。
クネクネ山道の両側には、極彩色の衣装に身を包んだインディアン達の村々が点在していて、
朝早くから共同洗濯場でおしゃべりに花を咲かせるお母さん達や、はだしで道で遊んでいる子供達、その側には犬やらニワトリやらヒヨコやら牛やらが三々五々に散らばっていてなかなか賑やかだ。
そんな光景が少しずつ減っていって、道の周囲がジャングルの分厚い緑で蓋われてきて、
その緑の壁の合間にコーヒーの木々やバナナの木やゴムの木が多く見えてくるようになると、標高がぐんと下がって段々と海に近づいてきたことが分かる。
時折通りぬける村々の側道で売っているのはココナッツ。
椰子の葉で屋根をふいた掘建て小屋の店の前でゴロゴロしているのは、木から切り落としたばかりの実が枝にまだ繋がっている緑色のココナッツ。
カウンターの上には、ココナッツの頭をちょんと切り落としてストローを立ててあるお飲み物用ココナッツと、周囲の固い緑の部分を切り落として茶色の繊維を剥き出しにした果肉調理用ココナッツ。
そのまた上の天井からは、白い果肉を櫛型に切り落としてすぐ食べられるように小さなビニールに入れてある、お持ち帰り用パックココナッツが釣り下がっている。
海岸方面に住む人々は、私達が普段見ている人々とは、まったく部族の異なる人々だ。
民族衣装も姿を消して、大概の女性はノースリーブとタイトのショートスカートに、ビーチサンダル。
ボンレスハムのような二の腕と、逞しい太腿をにょっきり突き出した、つやつやとした褐色の肌をした物売りのオバちゃん達。
もう何をするのも面倒くさい、といった風なサービス精神ゼロの人達を見る度に、暑過ぎる気候は人々から思考回路を無くして、性格を破壊するんだろうかと思ったりする。
4台のバンに分乗して、総勢30名からなる一行が着いた先は、素朴な海岸沿いの村の中に一件だけある大きなリゾート。
車を駐車したら、マングローブの林の中を小船で渡ってビーチに降り立つ。
カリブ海側のような真っ白な砂浜を期待している目には、ちょっと不満な黒い砂浜だけど、
日本の九十九里海岸に似た、ほぼ一直線の開けた海岸線がどこまでも続いている。
海は今回が初体験で、雪というものも知らないジェイは、海に大きな白い波頭が立つのを、これがテレビで見た憧れのスキーというものだと思って大満足。
やっぱり海はいいね!

