中南米のメルカド

ここは中南米。とある小さな国のお話。

その昔、何でも自分で平然とやっちゃう女ってのも可愛げがないなと思い、
「きゃっ!海老なんて剥けなぁ~い!」なんてカワイコぶってみたら、
そんな女は面倒くさいと捨てられた。

結構サバイバルしてると思われがちな自分の性格だけど、グロいものはやっぱりダメ。

スーパーで、冷凍エビフライパックが買える訳でもないここの生活のおかげで、海老だけはさすがに剥けるようになったけれど、
これが、一抱えもあるような大きな魚の始末となると、もうどうしていいのか分からない。
イカの内臓を始末するだなんて、指を入れて身からぬるりと中身を抜くのと同時に、私の意識も抜けてしまいそう…。

そんな私がここで暮していて、一番困るのは鶏肉。
ささみだけはパックになっているからいいものの、胸肉とかモモ肉とか、日本のスーパーのように部分別パックになっている筈もなく、ごろんとした塊を買ってきて家で切り分けなければならない。

鶏の身体の構造も考えず、関節の場所も分からないままに切ってみたら、トラックに10回くらい跳ねられて複雑骨折したようなフライドチキンが出来あがった。
それ以来、鶏を切り分けるのはジョンの仕事。

スイスに嫁いだ友人が、市場から買って来た鶏肉をまな板に乗せて「今日の鶏は随分毛深いね」と言いつつ、鳥肌の上にぽつぽつと残った毛根を平然と引っこ抜いていた。
当時まだ日本に住んでいた私は、海外に住むってこういうことか、と彼女の強さに驚いたものだ。

この国の市場(メルカド)では、生きた鶏も普通に売っている。
一家の主婦としては、それを絞めて、頭と足をちょん切って、毛をむしって、内臓を始末して…だなんて、
私には、一生掛かってもその域までは到達しそうにない。

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