腹黒い人 ハリケーン・スタン 4日目
しかし後から聞いたところによると、私達の街と同様、孤立してしまった隣村のサンタ・カタリーナでは、村自体が小さいがために食料の絶対量も少なく、
それだけに人々の危機感は深刻だったようだ。
小雨の降る中、役人の管理する倉庫にある食料の開放を求めて集まってきた人々の前に門は閉ざされ、前回の選挙で当選した権力者を支持した人たちにのみ、食料が売りに出されたらしい。
雨に濡れていく積まれた食料の山。門の前にはライフルを持った警備員。それを金網越しに眺めるしかない人々。
そんな非人道的な光景があるだろうか。
この例にもれず、この国の政治家の評判は悪い。
前にあった総選挙で、それまで公然たる横領のし放題だった県知事が追い出され、新しい県知事はクリーンな人で良かったと喜んだのもつかの間、結局は現職の知事も腹黒い本性を現し、やりたい放題の私利私欲の権化と化してしまった。
私達の街では、名のあるアメリカ人の民俗学者が、精力を傾けて作り上げた立派な図書館を、インネンを付けて取り上げてしまったのもこの知事である。
この知事の奥さんがまずは手始めに横領の容疑で更迭された、という噂が飛んだのは、皆の期待を含んだ街の空気が成したことだろうか。
まぁそれはとにかく、大統領が
「この非常時に何をやっとるんだ!今までのような態度じゃあ容赦せんぞ!」
と、プレスを前にしたラジオ放送で喝を入れたことだけは確からしい。
つづく

向こう岸との間に掛かっていた、街でもっとも交通量の多かった橋が、跡形もない。

