五本指ソックスの思い出
10年以上前、仕事でイタリアに行かせてもらったときのこと、
同行したおじさんが、せっかくだから本場イタリア製の靴を買たいと言い出したのに付き合わされて、ちょっとお洒落目な靴屋に入ってみた。
もうすでにオチは見えているとおり、それじゃあサイズを測りましょうねと屈みこんだセニョリーナの前ににょっきり突き出されたのは、おじさんの五本指ソックス。
水虫予防にいいとかでそういう靴下があることは、当時の私も知っていたけれど、それにしても実際に目にするのは20代のうら若きOL(=私ね)としては初めてで、思わず通訳する口も止って目が点!
しかし、体面を重んじる日本人の私としては、ここでうろたえてはいけないと、何も見なかったかのように振舞おうとしたのだが、このユニークな靴下を目にしたイタリア人のオネーチャンのショックの方が相当に大きかったらしい。
突如、ギャ~ッハッハッハッハッ!と静かな店内に響き渡る大声で笑い出した。
なんだなんだ?と集まってきたスタッフにも構わず、お腹を押さえてヒィーヒィー笑い続ける彼女を見ていたら、私も何だかすっごく可笑しくなってきて、憮然とするおじさんの後ろで、声を立てずに涙が出るまで笑い転げてしまった。
大笑いの渦中にあって、店の中では薄ら笑いを浮かべていたおじさんは、店を出るなり
「彼女も、あそこまで笑うなんて失敬だよ!」と言っているのを「そうですよねぇ」なんて返しつつも、
某有名新聞社のお偉いさんとしては、日本ではあんなにあからさまに笑われることはないもんなぁと、ちょっと意地悪く思ったりもしたものだった。
そんな忘れていた記憶の彼方から、十数年の時を超えて、今私の手元に現れた五本指ソックス。
あのおじさんの実用一点張りの白いソックスから比べると、ストライプ模様が格段にお洒落になっているソックス。
片足を上げて立ったままで履こうとすると、指がちゃんと収まってくれなくて、思わずイラつきそうになるこのソックス。
でもこれを履きつけると、足の先まで力が行き渡って歩きやすく、もうこれ以外は履けなくなるんだと、あのおじさんも言ってたっけ。
だけど一足しかないんだから、そんなことになったら困るよなぁ・・・。
ありがとうカズミさん、大切に履かせてもらいます。
でも、メイドの子が見たらまたあのイタリア娘と同じ現象が起こりそうなので、汚れたらそっとランドリーに出すことにするからねっ!

