嗚呼!バスタブ…
(つづき)
だがしかし、お湯を抜こうとしゃがみこんだとたん、目に入ってきたものは、なんとバスタブにくっきり横一線についた自分の湯垢…!
よそ様のバスタブに、こんな恥さらしなものを残したままでいい筈がない!
バスタオルは持参したものの、さすがにお風呂用洗剤の用意までは気が回らなかった私は、バスルームを瞬時に見渡して何かこそげ落とせそうなものを物色するも、スポンジひとつ見つからない。
ドアーの外から、掃除用具を持ってくることも考えたが、外ではパーティーの真っ最中。
私が抜け出た間に、誰かが用を足しにやってくる可能性を考えると、そんな危険は冒せない。
考えた挙句、手っ取り早くトイレットペーパーでこすってみることにした。
そして、その軽率な行動が、さらに悪い結果を呼ぶことになる。
湯垢についていた水滴に紙が溶け、カスとなって、湯垢の線をさらにぶっといものとしてしまったのだった。
ドアーに掛かっていた、その家の人たちのバスタオルを使うなどできない…、そんな最初の躊躇はもうどこへやら、5枚くらいあったでかいタオルを総動員しても埒が明かない。
ものの20分ほども奮闘した後、シャワーカーテンを端から端まで広げ、カーテンの裾をバスタブの中に突っ込んで、
「これを最初に見る人が、友人ではなく掃除のメイドの人でありますように!」
と、両手を合わせその場を後にしたのだった。
さて、そんな苦い思い出から、はや5年。
もはやあんなにキチャナイ私ではな~い!
最近は、近所のホテルにある天然温泉に時々浸かりに行くことにしているのダ。
グアテマラも日本と同様、火山の国。私たちの住む街でも、掘れば割と簡単にお湯が沸いて出たりするらしい。

円形のバスタブをぐるりと囲んだ植物が、外界からその一角だけ隔ててくれていて、そこはまるで緑のコクーン。
緑のカーテンに夕日の黄金色が映えて綺麗なので、大概私たちは日が沈むちょい前くらいを狙って行く。
先日は義妹の誕生日だったので、ワインとチーズとクラッカーを用意して、日が落ちてからはバスタブの周囲に幾つものキャンドルを灯して入った。
日本ではそれほど特別なこともない温泉も、こんな地球の裏側では、砂漠のオアシスのようにありがたい。


