あたしンち

昔同じ事務所で机を並べ、性格の曲がった上司の下で苦労を共にした友人から、何年かぶりでメールが入ってきた。
最後に会ったのはもう数年も前なのに、メールの行間から彼女の声が聞こえてきそうで、まるで先週別れたかのように話が弾むのが嬉しい。

メールを貰うまではすっかり忘れていたのだけれど、あの当時は「あたしンち」っていうコミック本が流行っていて、彼女と二人で爆笑していたものだった。

以前その彼女と、「お花がある生活って憧れるんだけど、なかなか高くって自分では買えないよねぇ。」という話をしていた中で、
家の中で一体どこに花を飾るかという問いに、うちの実家ではなぜかトイレの中だ、という普通でない状況にふと思い当たった。

和式トイレにしゃがみこんで、何気ない視線を投じるそのすぐ先に、花が数輪生けてある。

「あたしンち」に登場する「母」と、うちの母。見た目の印象はだいぶ違うんだけど、オリジナルな発想による逸話に事欠かないところは一緒。

花の疑問を聞いてみたら、「皆が見てくれる時間が一番長い場所だから」と、さらっと言われた。
決して安くはない生花。なれば、払った値段を賞味される時間で割って、お得感を計算していたわけか…。
そう言われてみれば、モダンな感じの花というよりは、菊や桔梗など仏壇系の花のチョイスが多かったのも、束で安いからだとうなづける。

お陰で、細かい花弁のつくりまで絵に描けるくらい、菊の花への観察眼は養えたけれど、
所帯を持った今の私としては、買ったお花はトイレではなく、やはりちゃんとテーブルの上へ飾りたい。

使っているトイレが洋式で、和式のように凝視できる一点が定まらないってのもあるけれど、
いくら花とはいえ、一日中人様の股ぐらを見ながら枯れていくってのもナンだろうし、ってな思いもある。

ひょっとしてこういうのって、反面教師っていうのかな?

キッチン

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