エミちゃんへ
「こぉきぃ~さんって人から、さっき道でもらったんですけど…。」
エミちゃんがひらひらと手にしていたのは、ミュージックフェスティバルのチラシ。
道を歩いていたら、「こぉきぃ~」と名乗るやけにノリのいいグアテマラ人のオジさんにとっ捉まって、満面の笑顔でチラシを手渡され、
ついでに周囲にいた彼の友人のオジさん達の紹介まで何故か受けて、訳も分からないままに日本人スマイルでその場をかわして来たということらしい。
腰もクネクネ、手振りもクネクネ、コーヒーを持つ手はもちろん小指が立ってるこのオジさん。
一見ゲイかと思いきや、骨の髄から女の子だ~い好き!
本職はヘアーメイク・アーティスト、ってのは理解できるような気もするんだけど、
女性の私でも髪の毛なんて触られたらうざったくて嫌なんだから、男性はいかんせん。
一体どんな人がお客なんだろうといぶかしんでしまう、不気味の国のアリスおじちゃんなのだ。
昔、招待されたとある友人のホームパーティーに行ったら、居合わせた女性陣にかたっぱしからダンスの相手を拒否されている彼が居て、
私に矛先が回ってきた時に、つい日本人の律儀さから受けてしまったら、たいそう感謝された思い出がある。
それから調子づいた彼はその後、恰幅のいいアメリカ人のオバちゃんとも意気揚々とダンスをし、
つい手が本能に従順になりすぎて腰より下に伸びてしまった瞬間、強烈なアッパーパンチを食らったらしい。
後日、本人がその時の様子を再現してくれたことには、
「あぁ~れぇぇ~」と叫んだまま、ひらひらと部屋の隅に飛んで行ったんだとか…。
でも、そんな彼のモンローウォークな腰の振り加減が、以前よりも少々小さくなったのは一年ほど前に事故ってから。
何でも、自転車に乗りつつこっそりトラックの後ろに掴まって走っていたら、突然すっ転んで腰の骨が砕けたらしい。
一時は再起不能と噂されながらも、努力のリハビリの結果、今では9割方回復したらしい彼は、
最近では、小型モーターをママチャリに自分で括りつけたオリジナルな改造自転車に乗ってご機嫌で街を走っている。
サドルの前には、ラッパ型の鳴り物まで付いていて、こっちを見つけると「プハ~ッ、プハ~ッ!」と慣らし、その上投げキッスまでくれるのも忘れない。
ある程度の距離を保っていれば、人畜無害でとっても気のいいオジさん。
彼の最大のいいところは、いつだってニコニコ笑顔でいること。
まるで、ハッピーをところ構わず撒き散らす、アナタは花咲かコーキーさん?
私の住む街パナハッチェルには、彼を含めかなり濃い目のキャラの人々が住んでいる。
エミちゃん、この街へようこそ!
海外青年協力隊としてこれから一年間、アナタの周囲にはこーんなに楽しい人々が住んでいます。
思う存分その空気を吸って、一年後には日本復帰が困難になるくらい、心身ともにパナに毒されることを祈っています。(笑)

