ご懐妊

ハ・・・、ハラが痛い。
行き交う人も多い大通りで思わずうずくまってしまった私。
キリキリと差し込んでくる痛さに、脳裏に浮かぶ顔ひとつ。
「今すぐ彼女に電話して、どうしたらいいのか聞いてみようか・・・?」

隣の町ソロラに住む彼女は、もはやその道の大御所である。

メルカドで買ってきた瑞々しいフルーツを使って、こちらの家庭でよく作られる美味しいフレッシュジュース。
そのミキサーに、精製された飲料水ではなくて、水道水をそのままジャーっと入れる奥さんの家にホームステイしている彼女は、
滞在して2年弱の間に既に4回も虫をお腹に飼ったというその道のツワモノだ。

それに比べて、7年間住んでいて一度の経験もない私。
今後の参考にと、以前うちに遊びに来てくれた折に彼女に聞いてみたことがある。
すると、

「普通のお腹の壊れたのと違うところは、まず第一にお腹が張ってくるんですよ~。
そして、やたらとオナラが出る。
で、それがもっとひどくなってくると、ゲップがたくさん出てきますね。」

・・・そんなになるまで放っておくのかい?
と、驚く私をよそに、得々と話を続ける彼女。

「市販されている虫下しの薬としては二種類あって、単なる寄生虫用と、アメーバも同時に退治できるやつ。
私はいままでアメーバ用のは使わなくって済んでいるんですけどね。」

さすがは大御所、知識が深い、
と、はさむ言葉もなく頷く私。
そして、

「あっ、実は、今もひとつここに居るんですよ~。」
と、愛しげにお腹をさする彼女、愛くるしい笑顔の20代前半、花の独身。

って、あの、ひょっとして、
・・・ご懐妊とかじゃあないんですよね?

私の突然の腹痛は一過性のもので終わったものの、やっぱり想像しただけでもかなりショックなこの話。
エイリアンがお腹を突き破ってでてくる、シガニー・ウィーバーになった気分だ。

海外青年協力隊としての彼女の任期も、残るところあと僅か。
「私が出来るグアテマラへの置き土産として、この話は次回遊びに来たときに、ちゃんと伝授して行きますから!」と、
その日はさわやかに我が家を去っていった。

う~む、次回会うのが楽しみなような、怖いような、である。

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