禁断の・お酒
グアテマラ第二の都市、シェラ方面に行く途中に密かな楽しみがある。
伝統の織物を扱う店が軒を並べる、小さな町サルカハ。
自家用車2台がようやく通れる幅しかない幹線道路に強引に車を止め、後方に続く大型バスの怒涛のクラクションにも臆せず、近くのティエンダ(何でも屋)に飛び込むのだ。
そこでのマジックワードは、「カルド・デ・フルータス」。
ガイジンの突如の襲来に凍りついた顔のオヤジさんも、この言葉を聞いたとたん、
「おぬし、知ってるな・・・。」
という、共犯者の微笑みに変わる。
アルコールで言えば、黄色いボトルが目に鮮やかな「ロンポポ」が有名なこの町だが、
一般の観光客には知られていない「カルド・デ・フルータス」の方が、実は逸品なのだ。
その特別さは、ボトルの取り扱われ方にも如実に表れる。
すなわち、カウンターの下から厳かに取り出された一品は、人目を忍びつつ素早く新聞紙に包まれ、さらに黒いビニール袋に入れて手渡される・・・。
つまり、もう皆さんお分かりのとおり、これは販売厳禁の自家製酒なワケ。
英語風に言えばムーンシャイン、のマヤ・バージョン。
グアテマラのローカルな地酒だなんて、身体にヤバいんじゃないか、とか最初はビクつきながら飲んでいた人でも、
一度口にすれば瞬く間にその虜になるという不思議な果実酒。
琥珀色の液体の底にゴロゴロと沈んでいるフルーツがまた、格別に美味しい!
その昔、これを買って、シェラから山の方に少し入ったところにある天然温泉「フエンテス・ヘオロヒーナス」に泊まりに行ったことがある。
渓谷の中にあって自然石で囲まれたこの温泉は、
夜が更けると雲が眼下に下りてきて、まるで満天の星の下、雲海の中に浮かぶ桃源郷のようになる。
バンガローにある暖炉に火を入れ、そんな場所で飲むこのお酒が絶品なのは、もちろん言うまでもない。
「口あたりがこんなにマイルドで、しかも不思議なことに、これってどれ程飲んでも決して二日酔いにならないのよね~♪」
と、ボトルをひとりで2本も空にしたアメリカ人の友人。
その翌朝、酒を独り占めした当然の報いとして、かなりなハングオーバーになっていた。
一軒宿の温泉地から町まで降りるには、ピックアップトラックの荷台に乗って、くねくね坂道を一路下っていく。
トラックの一番後ろに陣取って、前かがみに荷台から身を乗り出す彼女から流れ出る一筋のゲ★。
それは、山道のカーブに沿って綺麗にS字を描きつつ後方に流れて行った。
ぴったりと追随していた後ろのトラックの運ちゃんの目がにわかに大きくなり、急ブレーキを踏んで、あっという間に車間を広げていったのが忘れられない。
グアテマラのお酒にはやはり、こんな物語がよく似合う。

