ピタヤの季節

旬もののフルーツを手に取る瞬間ってのは、いつだって嬉しいもんだ。
その時々の季節感が、路上にまで溢れかえるこの国では、
パイナップルの季節であれば、黄色いパイナップルを荷台いっぱいに積んだトラックが、
マンゴーの季節ならば、バスの屋根の荷台に乗せた大きな籠に山盛りのマンゴーが、
その出盛りがやって来たことを教えてくれる。

一方、ピタヤという名のフルーツは、オバちゃんの頭の上に乗せられた籠に詰まれて、わが町パナにやってくる。
湖を渡ってちょうど対岸にあたるサンティアゴという村が産地なので、売りにくるオバちゃんの民族衣装はいつだって、水色の地に細かな鳥や花の刺繍が美しいものだ。

日本でも、ドラゴンフルーツと呼ばれて沖縄あたりで栽培されているらしいが、私がピタヤを初めて食べたのは、こちらに住み始めて少し経った頃。
肉厚でちょっとグロテスクな容貌のピンク色の実は、誰かにそれと教えられなければ、そうそう簡単に手の出る代物でもない。
では、肝心のお味の方は?と問われれば、例えるならば、キウイの甘みの薄いヤツ。
・・・つまり、「うんめぇぇぇ~っ!」という程のものでもないのである。

しかし、「奥さん、ピタヤはいらんかぇ?」と、朴訥な手で差し出されてみれば、ついつい買ってしまうこの不思議なフルーツ。
魅力は、なんといってもその色にある。
切ればびっくり!その中身は、自然界にはあるまじき、ショッキングピンクも鮮やかな蛍光色!なのだ。

ある時、友人達と集まって、このピタヤを使ったオリジナルカクテルを作ろうということになった。
濃いピンクの血が滴るような実を大きなスプーンで穿り出して、あとは、砂糖とウォッカをとろ~り!、それをジューサーで攪拌してみたら、
ライトを低めに落とした薄暗い都会のバーのカウンターでいかにも映えそうな、目にも鮮やかなネオンカラーのカクテルが出来上がった。

さて、次の問題はネーミング。
「バック・トゥー・ザ・フューシャ」(フクシア色だから)という名で盛り上がったが、実は私が一番気に入った名前は「ボトム・サプライズ」。
綺麗な色につられて飲み干していくと、グラスの底に沈んでいる塊は、けし粒のように小さな黒い種のつぶつぶ。
ここはグアテマラだから、ひょっとして蟻の死骸でも紛れ込んで・・・?なぁんて想像しちゃうところがサプライズでナイスなのだ。

ピタヤ

生で大量に食べるというよりは、そんな遊びにはもってこいのこのフルーツだが、
実は先日、私のそんなピタヤ感を覆す出会いがあった。

日本の民芸品店で売っているような、緑の竹細工のヘビのおもちゃ。
そのヘビが、にょろにょろと縦横無尽に繋がったような形のサボテンに、脈絡もなくポコポコと、ピタヤは生っている。
友人宅の庭で、実際に実がなっているところを見たのも初めてだったが、メルカドで見るものよりもひとまわりも実の大きなピタヤをもいで、その場で割ってみれば、
切り口からあふれ出した果汁とともに現れた中身は、なんと、ピンク色というよりは、濃く輝くルビー色!
歯ざわりのいいゼリーのような食感は、糖分もしっかりあって、巷で売られているものでは絶対にお目にかかれない濃厚さだ。

ピタヤがこんなに美味しかっただなんて!
口の周りをバンパイアのごとく赤く染めつつ、周囲を構わずむしゃぶりついてしまった私。
あまりの美味しさに、ニッと笑った顔は、さぞかし怖かったことだろう。

しかし、一ヶ月ほど前から始まったピタヤの季節も、実はもうそろそろ終わり。
メルカドは今、りんごの季節に移り変わろうとしている。

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