屋根の上のひみつ
ある小春日和の午後、隣家のトタン屋根の上ではシマ猫が午睡中。
お腹を上にして両手をくの字に折り曲げて、半開きの口からはちょっと舌も見えていて、しかもお腹から下は90度ねじれたまま微動だにしないという、
猫ならではの天下泰平さだ。
その日の夕方からは雨になった。
雨季も終わりに近づいて降雨のパターンが崩れているせいか、雨はシトシトと翌朝早朝まで降り続いた模様。
しかしいったん雨雲が切れれば、またいつものように紺碧の空が頭上に広がるのはこの土地ならではで、これが本当に気持ちいい。
緑したたる木々の葉から落ちる水滴と、土にたっぷりとしみこんだ雨水が水蒸気になって、朝の光がキラキラする街の中にゆらゆらと立ち上っていく、
そんな風景を見るのが大好きだ。
こんな日には掛け布団でも干したいんだけど、空気にまだちょっと湿気が残っているかな? 猫ですらまだ日向ぼっこはしてないだろうに・・・、
と、ふと目を外に向けると、
なんと前日の猫が同じ場所に、全く同じ格好!で寝ているのである。
うっ!妙チクリンな格好で寝ていると思ったのは、実は死んでいたのか~!!!
もしやアノ猫は、ネズミ用のエサを誤って食べたのでは・・・!?
我が家の台所を荒らすネズミに手を焼いて、毒を盛ったことのある自分の前科が心に疼く。
この街の家々の屋根の上というのは、まったく不思議のワンダーランドだ。
トタンを継ぎ合わせて乗せた屋根は、月日が経てば雷雨にさらされ強風に弄ばれて、どこそこからと雨漏りがしてくる。
だから人々は、雨の合間にはマメにはしごを持ち出して、釘と金槌でトンテンカンテンと・・・、と思いきや、
グアテマラっ子の頭の使い方は私たちとはちょっと違うのである。
まずはどこからか、漬物石大の石や不要のコンクリートブロックを探してきて、それを雨漏りしているトタンのつなぎ目にひょいと置く。
これで、少々の雨風でも大丈夫!しかも、釘を使っていないから修理費ゼロで経済的♪
そしてちょっと考える。
何も、石に限らずとも、重いものであればいいのだ!
おお!そう言えば、
もう使わなくなったミシンがあるぞ、粉挽き石もあるぞ、BBQグリルもあるぞ、花が枯れた後に雑草が生えてきた植木鉢もあるぞ・・・。
粗大ゴミを捨てる手間も省ける有効利用、これぞ一石二鳥でブエン・トラバホー!、
いつかまとまった金が出来たら屋根もちゃんと直してやるからな、と、ここはひとまず満足するのである。
しかしもちろん、それらは普段目に留まらない屋根の上のこと、
その後これらのモノ達はすっかり忘れ去られて、年月にさらされるまま、とってもアンティークな鉄の塊へと化していくのは当然の成り行きだ。



屋根にまつわる話で、もうひとつ。
コンクリートブロックを積み上げて出来ているこの街の家々にはよく、屋上の縁から鉄筋が、切り離しのままニョキニョキと生えている。
なんとまぁ建築中の家が多いこと!と旅行者は思うらしいが、これって実は節税対策だったりするのだ。
建築途中の家には税金が掛からない故に、
「お金がもう少し貯まったら上の階を作ろうと思って・・・」なぁんて言えるように、わざとらしく鉄筋をブランブラン残しておく訳だけれど、
これって傍から見ると、かなり見た目悪し。
しかも、「もう少しお金が貯まる」ことなんぞ、主の期待に反して何年経ってもあるはずもなく、
雨水で錆付いた鉄筋が月日と共に壁の中まで腐食していく様に、私などは、税金よりもそっちの方が後々お金が掛かるんじゃないかと心配するのだけど、
それはやはり、あくまでもガイジンな私の考え方で、
こちらの人としては、将来出て行く目に見えない大きなお金よりも、今自分の手から出て行く小さなお金の方が、一番大切!ってことらしい。

と、まぁそんな屋根を持つこの街のことだから、ある日突然、猫の死骸が乗っていたところで、何の不思議もないのだけれど・・・、
さて、その後の猫の一件。
少ししてからもう一度覗いて見たら、やはりまだ同じ場所に!、
・・・でも片足をピンとおっ広げて、股間のタマタマを舐めておった。
そして、そのままの姿勢で
「・・・なによアンタ?」と、こちらを一瞥するシマ猫。
まったく人騒がせなヤツだったのである。

