グアテマラの雪
ときどき考えるのだけれど、雪というものを実際に見たことのない人たちは、
白いものが天から降ってくる不思議な浮遊感や、手に取ったときのしゃりしゃりとした手触りや、見慣れた街が一夜にして白く塗りつぶされることの驚きなどを、
いったいどう想像するのだろうか?
我が家にある冷蔵庫は、手動式霜取り機能付である。
まぁつまり平たく言えば、最近冷えなくなったなぁと思ったらダンナに頼んで、庫内にこびりついた氷の塊をガリガリと削り取ってもらうのだ。
その際に大量に出た細かな氷の白い削りカスを、
「こういうのがたくさん集まったのが、雪みたいなもんだナ。」と言ったら、
メイドの子にかなり笑われた。
生粋の土地っ子である彼女は、もちろん本当の雪など見たことはない。
今年の年明け早々に、グアテマラ最高峰のタフムルコ山(4220m)にちょぴっと冠雪したのが「めずらしい!」とニュースになる程なのだから、
この国に住み続ける限り、雪を見ずして一生を終えることなど普通のことなのだ。
そんな、雪とは無縁のこの土地に住んでいて、年に一度だけ、木々の枝が白く賑わう季節がある。
木々の周りに近づけば、かすかに甘く芳しい香りが漂うそれは、コーヒーの小さな白い花。
咲くときは一斉に咲き始めて、か細い枝々にびっしりと貼り付いている様子はまるで、一夜にして木が雪化粧したかのよう。
花の寿命は短くて、何日かすると白いのが消えてしまうところも、淡雪のようで美しいはかなさがある。
これが、グアテマラの雪なのだと思う。

