最期にひとめ見るものは
いかにもありそうで、でも実はそれほど見ることはない、メルカド(市場)でのワンシーン。
人々の視線が集まる先に見えたのは、籠の中から首尾よく逃げ出したメンドリ一羽。
首を前後に振り振り、優雅にメルカドを散策しているかに見えるその一羽は、へっぴり腰で左右に両手を大きく広げたおばちゃんが近づけば、
それまでのスローモーションはどこへやら、とたんにきびすを返すと、スイカの山やトマトの山を乗り越えてあちらの通路へ。
メンドリ同様、まさか野菜の山を飛び越えるわけにもいかないおばちゃんは、玉の汗を額に浮かばせながら、よいこらせっと品々の並ぶメルカドの通路を迂回して、メンドリが着地した方へようやくたどり着くと、
それを嘲るかのように、今度はジャガイモの山の向こうへとひらりと身をかわす小賢いメンドリ。
メルカド前の通行車両も止めての、この大捕り物劇、
こんな5分間なら、足を止めて楽しむ価値が十分にあると私は思う。
モグリの豚の解体場が近所にある友人は、たまに、血相を変えた豚が家の前の通りを走って行くのを目にすることがあるそうだ。
その後のメンドリの運命が、フライドチキンだったかローストチキンだったか、はたまたチキンスープになったのかは知る由もないが、
メンドリだって豚だって、短い人生の終わりに一度、自由の空の下を爆走するのは悪くない。

