サファリディナーの夜

半年来暖めていたアイディアを実行に移したのは、雨季に入るちょっと前のこと。
料理好きな友人を4人ピックアップして、ウチも入れて全部で5家族の総勢15名が、日曜の夕方我が家に集まった。

事前に各人にリサーチして、メニューなるものも作ってみた。
今回の事の言いだしっぺは私だから、その辺の作業の受け持ちははもちろん私。
そして、主催者の権限で、その日のドレスコードまで決めてしまった。
「女性はその国に由来する服、男性はハワイアンシャツを着用のこと」

全員揃ったところでまず最初の国は、東洋の神秘わが国ジャパ~ン!
ぬるく燗をした日本酒でウェルカムドリンクのサービスをしたのは、浴衣を着込んで大和撫子風にムリをした私。
まぁ、こんなもんでも一応ガイジンにはウケるのである。

深い青色のガラス皿にバナナの葉っぱを四角く切って敷いた上に並べたのは、4種の海苔巻き、出汁巻き卵、ひとくち大学芋、人参を煮て花形にくり抜いたものなど。
和食はやっぱり目で見ても楽しまなきゃね!と思い、彩りのいい盛り合わせとしてみた。

[Appetizer]
Four different kinds of Sushi rolls
with fried sweet potato and egg roll
Served with sake and green tea

今宵の第一章を終えて、次に一行が向かうは我が家から歩いて10分のところにあるスイス人のお宅。
真っ赤な地に白十字のTシャツを着た友人が用意していたのは、2種類のサラダだ。
カリカリに焼いたオニオンとスイスチーズとナッツを散りばめたほうれん草のサラダの上に、ベーコンを熱して加えたホットドレッシングを回しかけたものが一品。
それと、スイスの国旗の色にちなんで、赤い色も目にまぶしいビーツと白いフェタチーズのサラダ、こちらはバルサミコビネガー風味。
傍らに添えられたホームメイドのブリオッシュも美味しくて、「既にここでお腹いっぱいになってはダメなのにぃ・・・」と思いつつ、ついお代わりなどしてしまう。

[Second dish] The Salad Station
Spinach Salad with a warm bacon dressing and caramelized onions
Swiss Lollosalat au citron with blue cheese, pears, and macademic nuts
Swiss Cross of red beets, red onions and feta with a balsamic vinaigrette
Homemade Zopf with Butter (brioche bread)
Served with Mango Iced Tea, Lemongrass Tea and Beer

やっぱりちょっと食べ過ぎたかな、とお腹をさすりつつ次に向かうは、やはり徒歩10分ほどのメキシコ人のお宅だ。
そう、この夜の催し「サファリディナー」とは、それぞれの家族がディナーコースのひとつを受け持って順番にもてなす側となり、全員で家々を周りながらコースを一皿ずつ食べ歩くグルメ企画なのである。

彼女の家の前に青々と広がる芝生の庭に椅子とテーブルを持ち出して、よく冷えた白ワインなどを傾けてみれば、4時から始めたこのディナーも、もうそろそろ夕闇が落ちてくる頃になっている。
テーブルの上に並べたキャンドルが、刻々と輝きを増してくる時間だ。

メキシコはチワワ州出身の友人が、「本当はこのチーズを使うんじゃあないんだけどねぇ」と材料の不足をこぼしながら作ってくれたのは、今回のメインディッシュのパート1となるエンチラーダス。
グアテマラにも同じ名前で呼ばれる一品はあるのだが、それとこれとでは全く別物で、チーズや肉をトルティーヤで葉巻のように包んでキャセロールに並べ、上からトマトソースとチーズを掛けてオーブンでじっくりと焼いたものだった。

[First main dish]
Enchiladas
Served with lemonade and wine

さぁてこのディナー、この辺りからが佳境になってくる。
何がって、もちろんお腹の張り具合のことだ。
大人子どもも取り混ぜて15人の満腹な一群が、普段は15分ほどの道のりを20分は有に掛けてトロトロと歩いたのは当然、その間に何とかしてお腹を空かそうという魂胆からである。
そしてそんな悪あがきも、グアテマラ人の友人宅で用意されていたメインディッシュ第二弾の前には水泡に帰すと知ったのは、ジューシーな肉汁したたるBBQチキンの大皿を前にした時のことだった。

炭火焼したチキンに掛かっていたのは、グアテマラ伝統料理としてよく知られるホコンと呼ばれるソースだ。
こちらでは「千のトマト」と呼ばれる、小さなグリーントマトに各種スパイスを加えて煮込んだこのホコンソースは、料理自慢の彼女が従来のレシピに独自のアレンジを加えたとあって、酸味のバランスが絶妙で、あんなに満腹なはずだった人々がむしゃぶるように食べている。

ガーデンパーティー風にセッティングされたディナーの席で、お腹をさすって幸せなため息をつきつつ空を見上げれば、その夜はおりしも満月だった。

[Second main dish]
Pollo en Jocon
Grilled chicken with salsa verde
Served with Rosa Jamaica

さてさて、もうこれ以上はどうやったって入らないぞ!という一群のお尻を叩いて次に向かったのは、最後のデザートを振舞ってくれるお宅。
南アフリカ出身の友人がコーヒーとともに出してくれたのは、彼の地では伝統のお菓子だという、濃厚な甘さのカスタードプディングだった。
オーブンから出してきたばかりの熱々なのを取り分けて、さらに上からホットソースをとろりと掛ける。

「デザートは別腹」の例えは、どうやら世界共通らしい。
その夜の、アメリカ人、スイス人、メキシコ人、グアテマラ人、南アフリカ人、そして日本人、の面々は、それを身をもって実感したのだった。

[Desert]
Malvapoeding
hot baked pudding with apricot jam custard sauce
Served with coffee and tea

この、「サファリディナー」というネーミング自体、サファリのように転々と場所を変えて食事をすることからもちろん来ているのだが、
このように家々を周るのではなくて、レストランを一皿ずつ梯子するって場合もあるらしい。
しかし、レストランの選択肢がイマイチなこの街では、今回みたいに友人宅を周った方が確実に美味しいディナーにありつける。
「また半年後くらいに企画しようねー!」と約束して三々五々と夜の闇に消えた、千鳥足のフードハンター達なのであった。

サファリディナー
サファリディナーのイメージとしては、こんな感じですね。
Photo by Thaths

2 個のコメント »

  1. いいアイデアですね!
    日本ではなかなか難しいかもしれませんね~。
    色んな国の人がすぐ近くに住んでいて文化交流ができるなんて羨ましい!次なる食べ物を求めて流れ歩く様、面白い(笑)

    コメント by yuki — 2008/07/20 日曜日 @ 00:14:21

  2. yukiさん、
    日本のようにいいレストランが選り取りみどり、って環境じゃないからこそ、
    このアイディアが楽しさ倍増って感じですけどね。
    日本でだったら、レストラン巡りでサファリディナーはどうかしら?
    でも、一皿ずつじゃあ嫌がられるかな~?苦笑
    yukiさんやワンダさん達の京都食べ歩き、いつも羨ましく読んでますよ!

    コメント by Chinita — 2008/07/20 日曜日 @ 05:34:51

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