大仏頭に魅惑されて :アノナ

メルカドに並んだフルーツ売りのバスケットの中に見え隠れする、一面に小さな突起のある不恰好な奴。
青銅色の大仏の頭がいくつも並んでいるようにも見えるこの果物は、現地の呼び名でアノナ。
あまりにも見栄えのしないフルーツなので、この国に住み始めた当初はたいした興味もなかったのだが、
ある日、ウチで働いている子が、「実は私が一番好きなフルーツなんですぅ。」と言うので買ってみた。

柔らかい皮ごと果肉を二つに切って、程よく汁気の滲んだクリーム色の果肉をスプーンですくって食べてみる。
一口目は、他のどんなフルーツに似ているとも言えない、なんとも形容しがたい味ながら、ちょいとお上品で優しい甘み。
そして、二口三口と食べ進めていくうちに、「うん、これはなかなか美味しいぞ、嫌味でない甘さと舌溶けの良さのバランスがなんともヨロシイ!」となっていく。

よくよく注意して見てみれば、実はうちの近所にも自生していたアノナの木。
日本の柿の木のように、かなり背が高くなる木で、花の咲く季節には、果肉と同じクリームイエローの花から漂う香りがなんとも芳しい。

私は日本では口にしたことのなかったフルーツだが、実はこれ、チェリモヤという名で知っている日本人も多いかも。
中南米はもとよりアフリカでも多く食べられているそうで、その風味は「アイスクリームのような」と表現されたりするようだけど、
私にしてみればこの形容は、う~ん、そうかなぁ???

英語圏ではシュガーアップルとも呼ばれるらしいが、アップルというよりは、「舌触りのなめらかな高級な洋ナシに、ちょこっと蜂蜜を落としたような味」。
・・・って想像できるかな?
これを読んで今、お口がジュルルとなったアナタは、この時期是非グアテマラのメルカドで探して見るべし。

アノナ(チェリモヤ)

この国でフルーツを選ぶ際にはどれもそうだけれど、並べられている品物のどれもが食べごろとは限らないので、買う側の審美眼はかなり問われる。
そして、このアノナも結構、その見極めが難しい。

まずポイントは、目の前で売っているおばちゃんが怒らない程度に指でそっと表面を押してみて、外の皮が硬すぎず柔らかすぎずのを選ぶ。
それから次に色味をチェック。
大きさの大小は問わないけれど、全体が緑色のはまだ若すぎだし、黒すぎるのは熟れ過ぎで中が茶色く変色していてほろ苦いのだ。
これぞ!と思って買って帰ったものがハズレだと、私自身けっこう凹んだりもするのだが、
しかし、うまくドンピシャ食べ頃のを引き当てればもう天国!
だって、極上の洋ナシに蜂蜜ですぞ!あのハーゲンダッツだって、そんなフレーバーは出していないに違いない。

そうそう、アイス繋がりで言えば、アノナ通に言わせると、「冷凍庫でキンキンに冷やしたアノナも舌触りが変わってかなり美味」だとか。
私はいつも、メルカドから買ってきて我が家の台所に辿り着いたとたんに食べ切ってしまうので、まだ試してみたことはないのだけれど、
う~む、想像するに、これはやってみる価値が十分にあるに違いない。
ジュルジュルジュル・・・。

そんなことを考えながら、毎日私はメルカドへ行き、
あの大仏頭を見つけた際には、アナだったかアノだったか頭の中で混乱しながらも、またオトナ買いしてしまうのだった。

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