ピヨピヨ狂想曲

日本でだってグアテマラでだって、小学校の下校風景というのはいたって賑やかだ。
教室から開放された子供たちが三々五々、あらゆる方向に散っていく平和な午後の風景。
そんなある日、ぺちゃくちゃとお喋りに忙しい子供たちの甲高い声に混じってなにやら聞こえてきた、小さなたくさんの異質な声があった。
子供たちがそれぞれの両手を前に合わせて大切そうに持っていたのは何と、生まれたてのひよこだ。
もちろん、おもちゃじゃなくってピヨピヨ鳴いてる本当のひよこ。

学校帰りの買い食い用に、数ケツァール(50円?)くらいの小銭はいつも持っているらしい子供たち。
校門前の商店に入荷したひよこの群れを見て、その日は“棒アイス”の代わりに“ひよこ”を買うことに決めたらしい。

でもちょっとそこのお母さん、ちょいと想像してみてくださいよ、自分の子がある日学校から突如ナマひよこを持って帰ってきたらどうします?

とりあえず段ボール箱の中に入れてみたはいいものの、子供が「それじゃあ狭くて可愛そうだから」と、勝手にリビングに放しちゃって、
そこに会社から帰ってきたばかりのお父さんが入ってきて、ひよこをうっかり踏み潰しそうになっちゃったり、・・・・ピヨピヨピヨピヨ災難ピヨ。
大体ねー小さいうちから親鶏から離されちゃった雛って、結構簡単に死んじゃったりするものなのだ。
万が一うまく育ったとしても、マンションのベランダに鶏小屋作ってピヨピヨピヨ、じゃなかったコケコッコー!って奥さん、一体どうします?

ひよこ自体は、生鮮市場でもいつも売られていて格段珍しくはないこの国、グアテマラ。
しかし、いったい誰が考えついたんだか、「ちっちゃい&可愛い」のキーワードが大好きな子供心を狙ったこの商売は新しい。
しかも言っちゃうと、マーケティング戦略だかなんだか知らないがこのひよこたち、なんと、ピンクやオレンジやブルーや紫といった蛍光色に全身スプレーされているのだ。

バレンタインデーの前には、全身ピンクのウサギが売られていた国だもの、今更驚くことじゃないけれど、でもこれがもし日本だったら、動物虐待で訴えられるぜ、店のおやじ。
いったい幾らで売られているのかと聞いてみれば、グアテマラ人でもびっくり安価の一羽1ケツァール(15円)で、つまり生卵一個の値段と一緒!ときたもんだ。

店先に幾つも積まれた、ひよこがぎっしり入ったダンボール箱。
見たところ、ひと箱に100羽ほど入っていて、つまり箱ごと買ってもたったの100ケツァール(1500円)かぁ~。
これをひと箱買って、昼下がりの大通りのど真ん中でうっかり箱を落としたらどうなるだろう?と、思わず夢想する私。

四方八方に散らばる色とりどりのひよこが約100羽、
タダひよこを一羽でも捉まえようと右往左往する老若男女も、さまざまな色彩の民族衣装だ。
突然振って沸いたヘンテコリンな騒ぎに、走っていた車もバイクもトゥクトゥクもストーップ。
さらにドライバーも降りてきてこの騒ぎに加わり、バンに乗っていた観光客は窓から身を乗り出して写真を撮りまくる・・・。
まるで白昼の狂想曲、日本でだったらちょっといいランチ代ほどの値段で、これはさぞかし愉快な光景を見れるに違いない。

そういえば昔、夏祭りの縁日でひよこを売っていたような気がするけれど、あれは今でもあるんだろうか?
「仲間から離したらすぐに死んじゃうから、買うのはよそうね。」と、やんわりと親に断られた幼いころの記憶は、ピヨピヨピヨの鳴き声をともに、ン十年を経た今でもよみがえる。
そして、自分が親になった今では・・・、子供にきっと同じことを言うんだろうな。

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