フォスター・ペアレント

ここは中南米。とある小さな国のお話。

出産は女の大役とか、女の人生の大仕事とか昔から言うけれど、医療が発達した昨今では、出産に対するマイナスなイメージはほとんど無くなって、もっと前向きに出産を楽しむ風潮になっていると思う。

日本を離れて海外で出産した私としては、日本の自治体が行っている母親学級とか、マタニティ・スイミングなんてのに凄い憧れを持ったものだ。

第一、出産の時にもしかして死ぬんじゃないか、なんて思いつつその日を迎える人も、今の日本ではそういないよね。

ところが、日本の裏側のこの国では、まだまだお産というのは大変なことなのである。
私の住む地域だけでも、出産で亡くなる女性は年間で50人ほどにも上るとか。

現地人の知り合いのお姉さんが、つい先日亡くなった。
難産した挙句、家から隣町の無料国立病院に運ばれる15分ほどの間に亡くなったのだという。

家族の誰一人として彼女が妊娠していたのにその日まで気付かなかったらしい。
彼女自身、民族衣装のスカートのベルトをギュッと締めて、誰に聞かれても「ちょっと太っちゃって」くらいの返事しかせず、その日を迎えるまでひたすら隠し通したのだそうだ。

初産で、出産もひとりで臨んだ彼女。
突然、生まれたての赤ちゃんと、その横で出血多量で苦しんでいる娘を見た両親の驚きったらなかっただろう。

この国では、このようなケースで生まれた赤ちゃんが母親によって捨てられることもままあり、この辺りに住む比較的裕福なガイジンが、フォスター・ペアレントになって資金的援助をしていたりする。

こうしたことの一つには、カトリックの国であることの弊害でもあるのだろうし、性教育の無知さ、科学的医療に対する不信感、などがこのような悲劇を生んでいるのだと思う。

今日街で、亡くなった彼女のお母さんが、マヤの人達がする独特のやり方で、赤ちゃんを布に包んで抱っこしているのを見かけた。
悲し過ぎて声を掛けられなかった。

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