結婚式のご祝儀

ここは中南米。とある小さな国のお話。

同じ敷地内に住む大家さん下で働いている庭師さんが、ニコニコしながらカードを手にやってきた。

ちゃんと文面が印刷してある何やら立派なカードは、結婚式の招待状。
彼の息子がもうすぐ結婚するんだと言う。

結婚式にはどうも金が掛かって頭が痛いこと、それから式の会場はここから急な坂を延々登った先でとても遠いこと、それらを言い沿えて、彼は仕事に戻っていった。

お祝いのことはもう少し時期が近づいてから考えればいいや、とそのまま放っておいたら、
その日からというものその庭師さん、大家さんの庭のみならずこちらの庭の水やりまでいつもとなくしてくれる。
そして毎回立ち去る前に、結婚式には金が掛かること、場所はここから凄く遠いこと、を忘れずに言い残していくのだ。

もう分かると思うけど、招待状を貰ったからといって、こういう結婚式にのこのこと出掛けてはいけない。
「私たちは都合があって行けないけれど、結婚式おめでとう」と言ってお金を包んであげるのがスマートなやり方。

以前、その辺りのことがピンとこなかった友人が、この庭師さんの長男の結婚式に、以前わざわざお祝いに出掛けたそうだ。

ガイジンなどほとんど目にすることがないだろう、小さな村での結婚式で、会場に丸く置かれた椅子のひとつに腰掛けると、披露宴の間中一言の会話もなく、周囲の村の人たちから黙ってじぃ~っと見つめられ続けたらしい。

日本人は本音と建前を使い分けるのが上手な国民だけど、この国の人たちだって、出費が絡んでくる場合には、そんな芸当を使ったりする。

その庭師さん、子供は6人でそのうちまだ結婚していないのは4人。
将来少なくともあと4回は、彼のこの結婚式プレゼンテーションを目にすることになりそうだ。

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